事務局 〒879-1506 大分県速見郡日出町3904-6 | |||
医療法人 久寿会 鈴木病院 | |||
TEL : 0977-73-2131 FAX : 0977-73-2132 | |||
mail : jimu@suzuki-hp.or.jp | |||
会長 | 奥 村 元 一 | ||
副会長 | 佐 藤 雪 | ||
幹事 | 臼 杵 德 二 | ||
副幹事 | 河 野 健 二 | ||
公共イメージ委員長 | 宮 﨑 仁 史 |
例会日 | 火曜日 | 19:00 | |
会 場 | 日出町 | ホテル&リゾーツ別府湾 |
■出席報告 | 秋吉尚康会員 | ||
会員総数 | 14名 | ゲスト | 0名 |
会員出席数 | 10名 (例会場7名 Zoom3名) | ビジター | 0名 |
会員出席率 | 76.9%(10/13) | 出席者数 | 10名 |
前々回出席率 | (1月18日) 76.9%(10/13) |
修正出席率 | (1月18日) 76.9%(10/13) |
100%連続回数 | 0回 | 100%通算回数 | 375回 |
出席免除会員 | 山田滋彦会員 |
● メイクアップ | |
事前 | |
事後 | |
● 欠 席 | 本多和夫会員、石和桂子会員 佐藤 雪会員、山田滋彦会員 |
点鍾 | 19:00 |
ロータリーソング | 君が代、奉仕の理想 |
ゲスト | |
ビジター |
日出RC会長 奥村元一
出世魚とは?その意味は?
出世魚とは、成長にともなって名前が変わっていく魚のことです。
成長と共に名前が変わっていく様が、武士が出世する際に名前を改名する慣習に似ていたことから、江戸時代頃から出世魚と呼ばれるようになりました。よく知られている出世魚にブリやスズキなどがあり、稚魚から成魚になるまで少なくとも3つ以上の名前を持っています。出世魚が名前を変えていく理由や、代表的な出世魚についてご紹介します。
なぜ出世魚は名前が変わるの?
出世魚は、成長していく過程で生息海域や漁の方法、そしても見た目も味も大きく異なります。漁師や料理人にとっては、同じ種類の魚でも、成長過程によって異なる名前で呼んでわかりやすくするためというのが、出世魚の名前が変わる理由のひとつです。また、「出世」という言葉の通り「名前が変わるごとにおいしくなる」のも出世魚の特徴のひとつ。名前がおいしさの段階を表現する手段にもなっています。
では、出世魚は英語でなんと表現する?
英語では、出世魚と同じ意味を持つ言葉は存在しません。ブリはどの成長過程でも「Yellow tail」と呼ばれ、大きさによって「big」や「small」などが付け加えられます。
出世魚という言葉は、先ほど紹介したように、武士が元服や昇進のたびに名前を変える習わしが起源とされており、日本特有のものであるからだと考えられます。また、同じ魚を成長過程ごとに区別して味の違いを楽しむというのも、日本ならではの文化と言えそうです。
代表的な出世魚の一覧と名前の順番
よく見るおなじみの魚でも、どんな名前を経てきた出世魚なのかを知る機会は少ないものです。実際、どんな魚が出世魚なのでしょうか?代表的な出世魚 ブリ スズキ コハダ ボラ クロダイ(チヌ)
■出世魚といえば、まず最初に挙げられるのが、ブリ(鰤)です。寒ブリと呼ばれるようにブリの旬は冬ですが、釣り人にとっては夏から秋にかけてのイナダやワラサの時期が馴染み深いのではないでしょうか?
サイズ 稚魚 40cm以下 40~60cm 60~80cm 80cm以上
関東地方 モジャコ ワカシ イナダ ワラサ ブリ
関西地方 モジャコ ワカナ・ツバス ハマチ メジロ ブリ
※上記におけるサイズの幅はあくまで目安で、各地で非常にバラバラの呼び方をします。
■スズキは、北海道南部から九州まで日本列島沿岸に生息する回遊魚で、淡白であっさりした白身はタイにも匹敵すると言われる人気の魚です。ヨーロッパスズキの英名が「seabass」ということから、釣り人の間ではシーバスと呼ばれルアーフィッシングを中心に楽しまれています。
サイズ 40cm以下 40~60cm 60cm以上
呼び方 セイゴ フッコ スズキ
■コハダは日本の沿岸から汽水域にかけて生息する夏が旬の魚です。アジやキスと同様に光り物と呼ばれ、寿司ネタとして人気の魚ですが、コハダの味で寿司職人の腕がわかると言われるほど、扱いが難しく繊細な味わいです。
サイズ 8cm以下 8~10cm 10~15cm 15cm以上
呼び方 シンコ コハダ ナカズミ コノシロ
出世魚は名前が変わるごとに味が良くなりますが、コハダについては全く逆で、値段が高く最も好まれるのがシンコ、次いでコハダと、逆出世魚とも言えるのが特徴です。
■釣り人には外道としてあまり好かれないボラですが、ボラの卵巣は高級食材のカラスミとして珍重されるなど、出世魚と呼ぶにふさわしい魚です。ボラの呼び名は、以下のような順番で変化していきます。
サイズ 10㎝以下 10~30cm 30~50cm 50cm以上
呼び方 オボコ イナ ボラ トド
ちなみに「トドのつまり」の語源は、ボラの成魚のトドのことです。出世魚が名前を変えて最後にトドになり、それ以上にはならないことから、「結局は」「最終的に」といった意味として使われるようになりました。
別府北RC | 2月 2日(水)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
2月 9日(水)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
2月16日(水)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
2月23日(水)の例会は法定休日の為、休会します | |
大分城西RC | 2月 2日(水)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
別府東RC | 2月 3日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
2月10日(木)の例会は祝日同週の為、休会します | |
2月17日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
2月24日(木)の例会は祝日同週の為、休会します | |
宇佐RC | 2月 3日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
2月10日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
2月17日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
別府RC | 2月 4日(金)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
2月11日(金)の例会は祝日同週の為、休会します | |
2月18日(金)の例会は未定です | |
2月25日(金)の例会は未定です | |
中津平成RC | 2月10日(木)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
湯布院RC | 2月 8日(火)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します |
2月15日(火)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
2月22日(火)の例会は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、休会します | |
別府中央RC | 2月15日(火)の例会は未定です |
1月29日(土)zoomにて、次年度の地区補助金支給基準の説明がありました。加賀山会員とは別々ですが、参加しました。資料をご覧ください。
当クラブは、上限額として242,938円となっております。算定方法は、過去3年度の寄付金額を人数で割った1名当りの寄付額と過去3年間の寄付額平均の2/1の金額を比較して、低いほうが補助金額上限となるそうです。
そのほか、寄付の大切さや、その管理方法などの説明がありました。年間1000ドルの寄付のポールハリスフェローの勧めもありました。今後は、地区に覚書を提出して、次年度の補助金獲得となっていきます。今後は、会員数をもっと増やして、財団への寄付を増やしていきたいと思います。
目次
はじめに-デジタルとアナログとの関係
1.デジタル社会とは何か
2.デジタル社会とは現実にはどんな社会なのか
3.デジタル社会の光と影
4.デジタル社会に求められているもの
5.デジタルデータの利活用
おわりに
参考文献
はじめに-デジタルとアナログとの関係
最近では,デジタルという言葉がよく使われるようになっている。デジタル(digital)とは,アナログ(analog)に対比される概念である。
デジタルとアナログの違いは,例えば,短針と長針とで連続な変化として時刻を表現しているアナログ時計と,短針も長針もなく11:00というように,不連続な数字だけで表現されるデジタル時計とを対比するとよくわかる。
右の写真は,VAIOというSONYのパソコンのロゴである。このロゴは,VAの部分がコサイン曲線によって連続的なアナログを表現しており,IOの部分が,1,0という不連続なデジタルを表現している。私事で恐縮だが,私は,アナログとデジタルを一体化したパソコンとして,このパソコンを長い間愛用していた。
一見したところでは,連続的なアナログと不連続なデジタルとは,全く異なるもののように思われるが,連続するアナログ時計を見る場合でも,私たちは,11時01分50秒という不連続な単位で時刻認識をしており,11時01分50.02…秒などという判断をしているわけではない。私たちは,状況によって,連続的な情報を不連続な情報として認識している。
現代において,アナログ機器よりもデジタル機器が増加しているのは,アナログよりもデジタルの方が,複製(コピー)が容易だからである。アナログの複製は困難であり,数回の複製で元のものとは異なって,劣化してしまう。デジタルの場合には,何回でも正確な複製が可能である。
私たちの体自体も,DNAの複製によって維持され,世代を超えて情報を伝承しているが,DNAの複製の仕組みは,アデニン(A),グアニン(G),チミン(T),シトシン(C)という4つの不連続な物質によって実現されている。
身近な本についても,本を手書きで作成していた時代には,複製には,多くの手間と時間が必要であった。活字という部品を使った印刷機が発明されることによって,本は短い時間で大量に生産することができるようになった。しかし,現代においても,その複製と輸送には,コストと時間がかかる。その点,デジタル書籍ならば,複製も輸送も数秒単位で効率的に実現できる。デジタル化によって労働生産性が向上するのは,このような事情に基づいている。
わが国の労働生産性は,先進諸国の中で最低のレベルである。紙とハンコというアナログ文化が幅を利かせてきたからである。ハンコを電子認証に変え,できる限りペーパレスを実現するというデジタル化を推進するだけでも,わが国の労働生産性は飛躍的に向上する。
わが国の政府が,社会をデジタル化の方向にもっていこうとしているのは,デジタル化には,わが国が遅れている労働生産性を向上させるという利点があるからである。
もっとも,デジタル化には負の側面も存在する。顕著な例は,デジタル機器の花形であるスマホによって,多くの子供を含む若者たちがスマホ依存症という重大な障害に悩まされていることであろう。さらに,デジタル化は,デッドコピーという著作権法違反やプライバシーの侵害をも容易にする側面を有している。これらの弊害を無視せず,これらの弊害を極小化しつつ,デジタル化を進めることが必要である。
1.デジタル社会とは何か
最近の流行用語にデジタルトランスフォーメイション(DX:Digital Transformation)という言葉がある。わが国が悩む長時間労働,ワーク・ライフバランスのゆがみを解決するためにも,デジタル化を推進することによって紙とハンコの文化を克服し,労働生産性を高めようというものである。
しかし,DXとは何かについては,人によって見解が異なり,企業のDXとか,行政のDXとかいっても,それが何を意味するかについては,見解の一致を見ていない。
この点,国民の代表者である議員が多数決原理に従って制定した法律は,その法律が改正・廃棄されるまでは,すべての国民がそれを前提として行動することを是とするという特色を有している。
2021年に制定された「デジタル社会形成基本法」は,デジタル社会とは何かを定義しており,そこで用いられるいわゆる「三種の神器」として,AI,IoT,Cloudの役割を「官民データ活用推進基本法」を引用しつつ明らかにしている。
デジタル社会とは何かを知るために,デジタル社会形成基本法を読んでみよう。
(1) デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)
デジタル社会形成基本法 第2条(定義)
「デジタル社会」とは,インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し,共有し,又は発信するとともに,官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第2条第2項に規定する,
〔1〕人工知能関連技術〔AI〕,
〔2〕同条第3項に規定するインターネット・オブ・シングス活用関連技術〔IoT〕,
〔3〕同条第4項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術〔SaaS:Software as a Service〕その他の従来の処理量に比して大量の情報の処理を可能とする先端的な技術をはじめとする情報通信技術を用いて,電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより,あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会をいう。
この法律で引用されている,「官民データ活用推進基本法」を続けて読んでみよう。
(2) デジタル社会の三種の神器
官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)は,先に述べたデジタル社会におけるいわゆる三種の神器について,以下のような定義を行っている。
1.「人工知能関連技術」〔AI〕とは,人工的な方法による学習,推論,判断等の知的な機能の実現及び人工的な方法により実現した当該機能の活用に関する技術をいう。
2.「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」〔IoT〕とは,インターネットに多様かつ多数の物が接続されて,それらの物から送信され,又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって,当該情報の活用による付加価値の創出によって,事業者の経営の能率及び生産性の向上,新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし,もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。
3.「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」〔SaaSなど〕とは,インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術をいう。
法律の文章は,厳密な用語によって作成されているため,理解が困難な場合が多い。そこで,以上の法律を概観した上で,デジタル社会とは何かを簡単に要約してみることにする。
(3) デジタル社会とは何か(要約)
デジタル社会とは何かをまとめると,以下のように整理することができると思われる。
「デジタル社会」とは,「インターネット環境の下で,
1.物のインターネット(IoT)を利用した大量データの自動収集,
2.人工知能(AI)を使ったビッグデータの分析・可視化,
3.クラウド〔SaaS〕等の最新・低廉な情報通信技術を用いて,
誰もが,ビッグデータを含むデジタル情報を適正かつ効果的に活用することにより,あらゆる分野で一人も取り残されることなく,創造的で持続的な発展が可能となる社会」のことをいう。
2.デジタル社会とは現実にはどんな社会なのか
法律による定義によって,デジタル社会とは何かという共通理解は得られたものの,法律によるデジタル社会の定義によっては,デジタル社会の具体的なイメージをつかむことは難しい。そこで,デジタル社会が目指す「あらゆる分野で一人も取り残されることなく,創造的で持続的な発展が可能となる社会」とは,これまでの時代でいうと,どのような時代なのか,また,どのような国でそのような理想的な社会が実現されつつあるのかを見ていくことにする。
(1) デジタル社会はどのような時代か
デジタル社会が実現しようとしている「あらゆる分野で一人も取り残されることなく,創造的で持続的な発展が可能となる社会」とは,一人ひとりと政府とが直接に繋がった社会である。このような直接民主主義を実現していたのは,古代ギリシャの社会であった。
つまり,現代のデジタル社会が実現しようとしているのは,古代ギリシャの民主制であり,個人と政府が直接に繋がっているばかりでなく,インターネット社会が要求しているように,個人は,自らの意見をもち,それを自分の言葉で表現し,自分の言葉に責任を持つ社会である。
デジタル社会が描く理想像は,まさに,古代ギリシャの直接民主制の再来である。その社会は,以下のような特色を有していた。
1.古代ギリシャでは,個人と国とが直接に繋がっており,個人の意見が,直接に政治に反映されていた。
2.その社会では,個人が以下の能力を有することが前提とされていた。
(1) 民会の場で,政治的な意見を述べることができる能力
(2) 裁判の場で,相手の弁論に対して説得的な反論ができる能力
(3) 祝典・追悼の場で,聴衆を元気づける演説ができる能力
3.このことを実現するために,成人になる前に,主権者教育を受けることが重要視されていた。
このように考えると,古代ギリシャ社会へのルネッサンスに向かうデジタル社会におけるDX(デジタルトランスフォーメイション)とは,デジタル社会に適応するように個人の資質や団体の組織を変化させることであるということがわかる。
さらに,個人である国民と国が直接に接触できるようになるデジタル社会においては,国民ばかりでなく,国家も以下に述べるような変革を迫られることになる。
例えば,日本国憲法第15条1項によって「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない」と規定されているが,このとについて,国家と国民とが直接に繋がっていない時代においては,全体の奉仕者の意味は,消極的な側面だけが注目される傾向にあった。すなわち,国家公務員は,デジタル社会においては,一人も取り残されないように,国民の一人ひとりに奉仕すべきであるにもかかわらず,国民の一人ひとりに奉仕することは,公益に反するかのように解釈して,これを回避する傾向があった。
国家公務員倫理法第3条1項も,「職員は,国民全体の奉仕者であり,国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚」すべきだとしつつも,「国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず,常に公正な職務の執行に当たらなければならない」と規定したり,同法同条2項も「職員は,常に公私の別を明らかにし,いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない」と規定したりしており,「全体の奉仕者」の意味を,国民の一部に奉仕することを禁止することであるかのように解釈してきたのであって,国民の一人ひとりに対してその人の福祉に最も適した奉仕をすることを回避する傾向にあったといってよい。
しかし,国家と国民とが直接つながることが可能となったデジタル社会においては,公務員が「全体の奉仕者」であるという意味については,「公務員は,一部の国民にえこひいきをしてはならない」というような消極的な意味に解するのではなく,公務員は,その業務の範囲内において,一人ひとりの国民に向き合い,一人も取り残されることがないように,それぞれの市民の福祉に最も適合した方法で奉仕を行うことが,「全体の奉仕者」の意味であるというように,「全体の奉仕者」の意味を積極的に解釈しなければならない。
つまり,デジタル社会においては,「一人も取り残さない社会」を実現することが,「公共の利益」とされることになったのであり,国家公務員法96条1項,または,地公法公務員法30条に基づいて,公務員は,その職務の範囲内で,一人ひとりの国民と向き合い,それらの国民の福祉に最も適合する方法で,「全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当っては,全力を挙げてこれに専念しなければならない」のであり,このことこそが,「行政におけるDX」の意味であることを自覚すべきであろう。
次に,デジタル社会がどこで実現されつつあるのか,先進的なデジタル国家を展望してみることにする。
(2) デジタル社会はどこで実践されているか
現在,デジタル社会を実現しつつある先進国は,エストニアの電子政府であるとされている。そこでは,以下のことが実現されている。
1.身分証明(マイナンバーカードより便利)
2.電子投票(2005年から国政選挙が可能)
3.健康情報管理(どこの病院でもOK)
このようなデジタル社会を世界に先駆けて実現した裏には,以下のような切実な動機があったとされている。
ロシアの隣にあるエストニアが,このまま存続できるか,誰も保証できない。そこで,物理的に国が奪われても,クラウド上に電子的に国をデータとして保護しておくことで,いつでもまた再出発でき,国民を守ることができる方法を考案した。それは,ハードが壊れても,新しいハードにOSをインストールし直すという行為に似ている。
国家のシステムは常にアップデートされ続け,他国に自国のバックアップを取っておく。そうやって国が国民の情報を電子的に保護していくというわけである。
(3) デジタル社会でなくなる仕事・就職先とは何か
2013年9月,オックスフォード大学のオズボーンは,「The Future of Work; 労働の未来」という論文において,米国において10~20年内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上という推計結果を発表した。統計的分析のみで算出した数字であり,現実的ではないとの批判もなされているが,製造業だけでなく,事務職についても,デジタル化による自動化の流れは着実に進行しており,デジタルに対応できない人から失業する可能性が大きいといえる。
進化論的に言うと,「生き残るのは,強いものでも,弱いものでもない。生き残るのは,変化に対応できるものだけである。」ということである。
具体的な職業について,どの職種が生き残り,どの職種が淘汰される可能性が高いかを検討した労作として,渡邉正裕『10年後に食える仕事食えない仕事-AI,ロボット化で変わる職のカタチ』東洋経済新報社(2020/3/12)がある。この本においては,10年後に消える仕事として以下の2つのタイプの仕事を挙げている。
1.AI・ブロックチェーン失業
放射線科医(1次読影),社会保険労務士,税理士(帳簿作成),広告マン(ネット媒体),建築士(概要設計),トレーダー(注文執行),公認会計士(1次監査),小売店経営(実店舗)司法書士,証券アナリスト(短期売買),薬剤師(薬局・ドラッグストア),マーケター(市場分析),行政書士,経理・財務(主計),学校教員(マス授業)
2.ロボティクス失業
キャッシャー(レジ・接客),検針員,航空会社の地上スタッフ,鉄道運転士,ホテルフロント(受付・決済),物流倉庫作業員(商品搬送),入国審査官(ルーティン審査),郵便配達員,外食店員(注文受け,決済),品質管理・検品,タクシー運転手(地方・郊外),警備員(現金輸送),スポーツ審判(予選,アマ大会),金融業事務員,宅配の配達員(地方・郊外),交通量調査員,行政事務員,トラック運転手(高速道路)
将来のことは誰も分からないのだから,上記の予想が当たるかどうかは不透明である。しかし,AI化によって,すべての仕事に変化が生じるのは避けられない。しかも,上記の本は,現場主義を貫いて作成されたものなので,上記の予想が外れるとすれば,それは,主として,既得権益という利権の厚い壁が,それらを守るからであろう。
なお,本書は,デジタル化によっても生き残る仕事,生まれる仕事についても論じているので,参照するとよい。
3.デジタル社会の光と影
デジタル化は,わが国の弱点である労働生産性を向上させ,失われた30年というトンネルから抜け出させる力を持つと同様に,デジタル化に対応できる人々と,デジタル化に対応できない人々との格差を拡大し,デジタル化の花形であるスマホにはまり込んで,スマホ依存症になる子どもたちを大量に生み出すという危険性をも有している。
だれ一人取り残されないという理想的なデジタル社会を形成するためには,デジタル社会の光の部分だけでなく,デジタル社会の陰の部分にも光を当てて考察することが必要である。
(1) デジタル社会の光としての労働生産性の向上
わが国の労働生産性は,G7の中で最低であり,そのことが要因の一つとなって,わが国の賃金は,失われた30年の間,ほとんど上昇していない。デジタル化を進めた諸外国が労働者の賃金を上げているのと対照的である。
わが国の労働生産性が低い原因は,紙とハンコに頼りすぎ,意思決定に時間がかかり過ぎていることが大きい。したがって,デジタル化を進めて,すべての手続においてペーパレス化と電子認証,電子決済システムを採用すれば,諸外国と同様,労働生産性は確実に向上する。
(2) デジタル社会の影としての違法コピー,プライバシー侵害
デジタル化の利点は,先に述べたように,複製の容易さにある。このことは,利点であると同時に,デッドコピーをも助長し,著作権侵害ばかりでなく,プライバシー侵害の拡散という負の側面を有している。
(3) デジタル社会の影としての格差の拡大とスマホ依存症の拡大
1) AI時代に生き残る仕事は,集中力を要するものばかりである
先に述べたように,自動化や人工知能の普及により,消えてしまう職業は多い。人間に残される仕事は,おそらく集中力を要するものとなる。ところが,皮肉なことに,集中力はデジタル社会で最も必要とされるものなのに,そのデジタル社会によって奪われてもいる。
この点に着目して,スマホ依存症に警告を発しているのが,アンデッシュ・ハンセン(久山洋子訳)『スマホ脳』新潮社(2020/11/18)である。本書の論理展開に沿って,スマホの弊害とその解消法を考えてみたい。
本書によれば,文化や科学技術の躍進の多くは,徹底的に集中する能力を持った人たちによってなされてきたものばかりである。例えば,相対性理論やDNA分子の発見,それに,iPhone-皮肉なことに,集中力を乱すのにうってつけの道具(スティーブ・ジョブズが,10代の自分の子供に対して,iPadを使って良い時間を厳しく制限していたことも皮肉な話である。)-の開発には,尋常ではない集中力が求められた。スポーツや楽器,プログラミング,記事の執筆,料理などの特技もすべて,集中して努力した結果の産物に他ならない。
2) 集中力を増すためにはどうすればよいのか
本書によれば,人間の進化の過程を振り返ってみると,長い間続いた狩猟採集の時代において,狩りをしたり自分が追われたりしたときには,最大限の集中力が必要だった。本当に必要なときにいちばん集中力を発揮できるように,脳は数百万年かけて進化してきたのだという。そういうわけで,最大心拍数の60%~90%の運動をするときに脳は集中するようにできている。毎日の生活の中で,最小で6分間,理想的には,15分間,そのような運動をする習慣をつけると,脳の集中力は,増すことになる。つまり,毎日運動を続けることによって,脳の集中力は格段に向上するということになる。
このことは,どうしてもやらなければならない仕事,宿題についてもいえそうである。このような強制的な負荷を早く片付けることによって,ストレスが減少するとともに,自由時間を得ることができる。
しかも,義務的な仕事をきっちりとこなすことができると,多くの人からの信頼関係が得られる。そして,人から信頼されると,ますます,自由な仕事をさせてもらえるようになる。仕事がきっちりできるという信頼を得ずして,大きな仕事を任されるはずがないのである。
3) 集中力の継続を妨げるスマホの甘い誘惑に打ち勝てるか
集中力を継続させるためには,続ける努力ばかりでなく,甘い誘惑に打ち勝つことも必要である。つまり,「ごほうび」がなくても,長い期間,集中力をかけて自分の能力を向上させるという,報酬を先延ばしにできる能力が必要となる。ところが,報酬を先延ばしにすることは,実は,難しい。
将来もっと大きな「ごほうび」をもらうために,すぐにもらえる「ごほうび」を我慢するのは非常に重要な能力である。実際,それができるかできないかでその子の人生がどうなるかだいたいわかるという。マシュマロをすぐに1個もらうより2個もらうために15分待てる4歳児は基本的に,数十年後に学歴が高くいい仕事についている(シーナ・アイエンガー(櫻井祐子訳)『選択の科学』岩波書店(2010/11/15)参照)。
アンデッシュ・ハンセン(久山洋子訳)『スマホ脳』新潮社(2020/11/18)によれば,報酬を先延ばしにできなければ,上達に時間がかかるようなことを学べなくなるようだ。クラシック系の楽器を習う生徒の数が著しく減ったのもひとつの兆候だという。ある音楽教師にその理由を尋ねたところ,こんな答えが返ってきた。「今の子どもは即座に手に入るごほうびに慣れているから,すぐに上達できないとやめてしまうんです。」
4) スマホの誘惑に負けずに集中力を高める方法とは
どんな分野でも,ひとつの専門技術を習得するには,1万時間の集中した学習が必要とされている。毎日休まず3時間の時間をかけても,10年かかるというのが厳然とした現実である。1日5時間集中して学習しても,6年はかかる。小学校6年間でリベラルアーツを修得し,中・高6年間でデータサイエンスを修得する。そして,大学・大学院の6年間で専門をマスターする。そうすれば,AI時代を悠々とのりきることができる。
そのためにも,集中力を妨害するスマホ依存症(スマホを外して3時間を耐えられない)から脱却する必要がある。
くり返しになるが,毎日の生活の中で,最小で6分間,理想的には,15分間,最大心拍数の60%~90%の運動をする習慣をつけると,脳の集中力が増す。その上で,1日3時間,スマホを切って,集中的な学習を続ければ,AI時代に生き残れる専門性,および,人から尊敬される教養を身に着けることができると思われる。
4.デジタル社会に求められているもの
デジタル社会では,古代ギリシャ社会のように,個人が直接国家とつながり,直接民主制が実現可能となる。そこにおいては,個人は,自立した存在として,社会の偏見や同調圧力に屈することなく,自らの意見を持ち,自らの言葉で意見を表明し,人々を説得する能力を持つことが必要となる。
そればかりでなく,人間は社会的動物なので,人々と協力し合って生活していかなければならない。そのためには,周りの人々とコミュニケーションをとる能力,問題が生じたときに,それを平和的に解決する能力を持つことが必要となる。
そして,問題解決のあり方は,日本特有の三方よし,すなわち,「自分良し」,「相手良し」,「世間よし」にとどまらず,それにもう一つを加えて,「将来良し」を目指さなければならない。それが,SDGs(持続的発展目標)の17の目標とも合致するのである。
(1) デジタル社会の理想的な人物像
古代ローマの時代から,現在に至るまで,大人であれ子どもであれ,自立した人間の理想像は,変わるところがない。むしろ,デジタル社会になって,個人の能力が,インターネットを通じて,古代ギリシャの場合のように,個人が才能を存分に能力を発揮できるようになった分だけ,個人の資質もよりいっそう高めることが望まれるに至っている。
子どもに望まれている能力については,木村泰子『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』青春出版(2020/11/20)が明確に論じている。また,大人の能力については,世界で120万人を超える会員を擁しているロータリークラブの中核的価値観(親睦(Fellowship),高潔性(Integrity),多様性(Diversity),奉仕(Service),リーダーシップ(Leadership))が個人に要求される資質を典型例として明確に示している。これらの個人の資質に関わる概念は,以下のように体系的に整理することができる。
1.他人を大切にする
1-1. 多様性を認める(Diversity)それが人を尊敬することに繋がる。
1-2. 人と人とが尊敬しあってコミュニケーションと親睦を深める(Fellowship)
2.自分を育てる
2-1. 高潔性(言行一致)を身に着ける(Integrity)
2-2. フォロワーシップとリーダーシップを養う(Leadership)
3.失敗を恐れずチャレンジする
3-1. 失敗したら,めげずにやり直す(Resilience)
3-2. 奉仕活動を実践する(Service)
(2) デジタル人材の教育目標
人類を含む霊長類は,他の動物とは異なり,協力し合うための特殊な装置としてミラー・ニューロンというお互いに共感しあうことができる神経細胞を有している。もっともこの細胞は,一方が笑えば,他方も笑い返すという,平和を生み出すこともできると同時に,一方が怒ると,他方も興奮して攻撃的になるという戦争を引き起こすこともできるように仕組まれている。つまり,戦争と平和は,人間の一つの神経組織から生じるものなのである。したがって,人類が破滅の戦争へと向かわないためには,人類を平和活動には共感し,戦争行為には同調しないように誘導するという人為的な教育が必要である。
デジタル社会における教育は,以下のように,第1に,データサイエンスによってデータサイエンティストを養成するとともに,第2に,平和的な紛争解決能力を高め,戦争への道には同調せず,自らの頭で考え,その考えを実行に移すことができるための教養(リベラルアーツ)教育が必要である。
1.データサイエンス
2.リベラルアーツ(広い素養)
1) 哲学
2) 生物学・心理学・医学
3) 法と経営
(3) デジタル人材養成の教育方法
デジタル社会を形成するに際しては,以下のように,データサイエンスを学びつつ,データサイエンティストとしての能力を高めるために必要なリベラルアーツ(教養教育科目)を並行的に幅広く修得できる教育方法を採用しなければならない。
1.専門教育と教養教育を統合する教育方法(STEAM教育)によりデジタルプラットフォームを創造して起業できる人材を育成する。
2.教育についての物理的・地理的制約を大幅に克服できるリモート(遠隔)教育を軸として対面教育で充実した教育を実施する。
5.デジタルデータの利活用
デジタル社会において,最も重視されるべきは,データである。データには,個人の同意がある場合に限って公開されるべきデータと,一般に公開されるとともに,誰もが利用できるデータとに分類される。
前者が個人情報であり,後者が著作権に関するデータである。
(1) 個人情報の保護と利活用の理念
個人情報には,人物情報,健康情報,信用情報というように,価値の高い情報が含まれている。したがって,このような情報は,規制を緩めると,個人のプライバシーの権利が侵害される恐れがある。したがって,個人情報の保護に関しては,以下のような規制方針が採用されるべきである。
1.本人の意思の尊重(透明性,目的の限定,説明責任)
1) 本人が同意しして収集したデータは,本人が認めた明確な目的にのみ利用できる。本人の知らないところで本人の情報をやりとりしてはならない。
2) 本人に情報のコントロール感を与える。
3) メリットを具体的かつ肯定的な表現で説明する。
2.本人の利益の最適化(データの最小化,正確性の確保,記録保存の制限,セキュリティの確保)
1) データの正確性を保持する。
2) データは,権限がない者がアクセスできない方法で保存する。
3) データの利用に際しては,本人の利益を向上させる場合に限定する。
(2) 著作権の保護と利用の理念
著作権法の目的は,著作者が創作活動に際して投下した資本を回収する独占的な権利を与えることによって,著作者を保護すること,および,一般市民が著作を公正に利用することを促進することを通じて,文化の発展に寄与することである(著作権法1条)。
著作権が一定の期間によって消滅し(著作権法51条~58条),創作物としての著作がパブリックドメインに属し,一般市民が何の制約もなしに,自由に著作を利用できるようにしているのはそのためである。
この観点からすると,憲法,法律,その他の法令,判例等の法の一次資料は,作成の最初の時点から,著作権法の対象から外れてパブリックドメインに属しており(著作権法13条),市民が何の制約もなしに自由に利用できるという点で,最も優れた著作ということができよう。
従来の著作権法は,先に述べたように,文化の発展に寄与することを目的に掲げつつも,その手段として,著作者第一主義,すなわち,著作を創作した著作者の財産権と人格権とを保護することを第一義的に考え,一般公衆の公正な利用については,著作権を制限するものであるとして例外的に考慮するにとどめるという方針を貫いてきた。
しかし,インターネットの発達によって,今や,すべての国民が容易に著作を公表することができる時代が到来し,デジタル社会においては,著作者と一般国民とを区別することができない状態が生じている。このような現実を無視し,著作者を特別に保護することは,無意味となっている。なぜなら,すべての人を保護するというのは,特別法として,一般国民とは異なる著作者を保護するという著作権法の目的に背理しているからである。
そこで,デジタル社会において,文化の発展に寄与するためには,一般国民から区別された特定の著作者を保護するのではなく,すべての国民が著作を自由に利用し,それに基づいて,従来よりもさらに質の高い著作を創造できる環境を整えること,すなわち,著作利用者第一主義を採用することが重要となる。
ここでいう著作利用者第一主義とは,すべての国民が著作を自由に利用することを通じて,著作者の裾野を広げ,そこから質の高い著作を創造するという試みである。したがって,一方で,従来の著作者第一主義の弊害を除去する必要がある。すなわち,国民の自由な著作利用の障害となっている,特権としての著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を廃止し,かつ,国民の自由な著作利用を妨害する差止請求権を廃止することが必要となる。
他方で,著作利用者第一主義は,二次的に,著作者等の利益に配慮することを否定するものではない。すなわち,著作者等の投下資本を回収するために,著作者等には,公正かつ公平な補償金制度を確立することの必要性を認めるだけでなく,すべての著作をクラウドに登録し,著作の利用の透明性を高め,ロイヤリティを確実に徴収できる権利を与える必要があると思われる。このような,著作者等の利益にも配慮した著作利用者第一主義を採用することによってのみ,著作者の裾野を広げつつ,著作の質を飛躍的に向上させるという,著作権法の究極の目的が実現できると思われる。
(3) マネー情報の活用
デジタル社会でその重要度を増しているのは,先に述べた個人情報と知的財産,特に,著作情報であるが,マネーに関する情報も,電子決済が採用されるデジタル社会においても,その重要性が際立っている。
マネー情報については,最近は,電子マネーからデジタル通貨への動きが顕著である(宮沢和正『ソラミツ世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ-日本発のブロックチェーンで世界を変える-』日経BP(2020/12/21)参照)。
もしも,中央銀行が現金と同じ通用力を持つデジタル通貨を発行するようになれば,現在,バラバラに発行され,販売店に手数料の負担を強いている電子マネーは,消滅するとされている(野口悠紀雄『データエコノミー入門-激変するマネー,銀行,企業』PHP新書(2021/10/28)242頁)。
さらに,中央銀行のデジタル通貨と連動するデジタル地域通貨が発行されるならば,自治体の財政基盤も強固なものとなりうる。この点については,紙面の都合上,詳しく論じることができないが,宮沢和正『ソラミツ世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ-日本発のブロックチェーンで世界を変える-』日経BP(2020/12/21)196頁の以下の記述が参考となるので,原文のまま引用する。自治体の財政担当者には,この点について,詳細な検討をすることを薦めたい。
デジタル通貨の特性として,ブロックチェーンのスマートコントラクトを活用し,発行主体が管理可能な範囲で減価(インフレ)や増価(デフレ)などの施策を打つことで,消費促進や人の動きを変えることが可能となる。
増価や減価の事例としては,例えば1万円で1万1,000円分のデジタル地域通貨が購入可能で,それが1カ月以内に使用しないと1万円分の価値に戻ってしまうといった施策だ。これによって消費を喚起することができる。1,000円分のプレミアムの増価,有効期限到来による1,000円分の減価は,現行法でも対応可能と考えられる。
おわりに
コロナ禍は,多くの人の命を奪い,さまざまな害悪を残す一方で,私たちがやるべきであるにもかかわらず先送りにしてきたことを一挙に進めるという契機にもなった。
わが国が先送りしてきたデジタル教育は,リモート授業を余儀なくされることを通じて,5年先の計画が1年で実現できたなど,やればできることがあることを私たちに教えてくれている。
コロナ禍の中で推進されているデジタル社会の形成についても,単に,IoTやAIやクラウドを利用することによって国民の利便性を高めるだけに終わらせるべきではない。
むしろ,SDGs(持続的発展目標)が掲げている「誰一人取り残されない」という社会の実現が,国民の自己責任の問題ではなく,実は,「公共の利益」に関わる国の責務に関する問題であることを国民全体が理解することが必要である。
日本国憲法に規定されている国民の三大義務(子女に普通教育を受けさせる義務(憲法26条2項),勤労の義務(憲法27条1項),納税の義務(憲法30条))についても,単に国民の自己責任の問題であると考えるべきではないと思われる。
頻発する自然災害や,今回のコロナ禍等によって,国民の責任とは言えない事情によって,国民がこれらの三大義務を果たせなくなる場合があることが明らかになったのであるから,国や地方公共団体がそれらの人々に支援の手を指し伸ばすことは,「公共の利益」に関することであると理解すべきである。したがって,このような場合を含めて,「誰一人取り残されないデジタル社会」を実現するために,公務員は,「全体の奉仕者」として,国家公務員法96条,地方公務員法30条に基づいて「公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当つては,全力を挙げてこれに専念しなければならない」のである。
そのような認識の下で,官民学が協力して,デジタルデータを適正に活用することを通じて,先進諸国の中でわが国が一番遅れを取っている労働生産性を改善させ,長年の懸案であった長時間労働の弊害を改めることを通じて,ワーク・ライフバランスを実現するとともに,じわじわと進行しつつある相対的貧困率の改善を実現できるようにすることが重要であると思われる。
参考文献
(1) データサイエンス
・北川源四郎=竹村彰通編内田誠一=川崎能典=孝忠大輔=佐久間淳=椎名洋=中川裕志=樋口知之=丸山宏『教養としてのデータサイエンス』講談社(2021/7/1)
・中山浩太郎(監修)松尾豊(協力),塚本邦尊=山田典一=大澤文孝『東京大学のデータサイエンティスト養成講座』ナイナビ出版(2019/3/14)
(2) 法
・石井夏生利=曽我部真裕=森亮二編著『個人情報保護法コンメンタール』勁草書房(2021/2/20)
・小向太郎『情報法入門』〔第4版〕NTT出版(2018/3/23)
・福岡真之介=桑田寛史=料屋恵美『IoT・AIの法律と戦略』〔第2版〕商事法務(2019/3/30)
・弥生真生=宍戸貞治『ロボット・AIと法』有斐閣(2018/4/10)
(3) 経営
・舘岡康雄『利他性の経済学-支援が必然となる時代へ-』新曜社(2006/4/1)
・原泰史『Pythonによる経済・経営分析のためのデータサイエンス-分析の基礎から因果分析まで-』東京図書(2021/2/25)
・マーティン・カイン=クリス・オハラ(セールスフォース・ジャパン監修)『カスタマーデータプラットフォーム-デジタルビジネスを加速する顧客データ管理』翔泳社(2022/2/7
・L・ランダル・レイ(中野剛志=松尾匡・解説, 島倉原=鈴木正徳・訳)『MMT現代貨幣理論入門』東洋経済新報社(2019/8/30)
・渡邉正裕『10年後に食える仕事食えない仕事-AI,ロボット化で変わる職のカタチ』東洋経済新報社(2020/3/12)
(4) デジタルマネー
・野口悠紀雄『データエコノミー入門-激変するマネー,銀行,企業』PHP新書(2021/10/28)
・宮沢和正『ソラミツ世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ-日本発のブロックチェーンで世界を変える-』日経BP(2020/12/21)