会長の時間

日出ＲＣ会長　加賀山茂

偽りの親睦と四つのテスト

　これまでの会長の時間で，私は，ロータリークラブの基本的な理念について，第1回目に「四つのテスト」の意味，第2回目に「ロータリーの目的」の意味，第3回に「五大奉仕部門」，第4回に，「公平とは何か」について，タクシーの相乗りの場合の料金の公平な負担について検討させていただき，第6回は，「微笑みを微笑みで返す」とか「いただいたら，お返しする」とかという共感脳の抱える「やられたら，やり返す」というジレンマについて話しました。そして，いずれの回においても，本年度のRI会長（Holger Knaack氏）のテーマである「ロータリーは機会の扉を開く」を活用させていただき，3つの扉の色に即して，赤い扉は，「親睦（和らぎ睦び）」として，黄色の扉は，「職業倫理の向上」として，青の扉は，「次世代への奉仕活動の実践」として整理させていただきました。
　今月は，「四つのテスト」のうち，第3の「好意と友情を深めるか」すなわち，親睦の問題を取り上げて，「ゴシップ」を通じた親睦が「偽りの親睦」であり，四つのテストのうちの第4の「みんなのためになるかどうか」，そして，第1の「真実かどうか」に深くかかわっていることを論じてみたいと思います。

　私は，前回の会長の時間で，「いただいたら，お返しする」という共感脳が，「やられたら，やり返す」という副作用を伴うという「共感脳のジレンマ」について話しました。この話題は，前回のレジュメに明記しておきましたが，最近のベストセラーであるドナ・ヒックス『Dignityディグニティ』幻冬舎（2020）を読んでいて気が付いたものです。
　この本は，そればかりでなく，人間関係をよくするための方法，人間関係を台無しにする問題を回避する方法について，生物学や脳科学の知見を取り入れつつ具体例を示してわかりやすく説明してくれていますので，人間関係でお悩みの方には，読んでみることをお勧めしたいと思います。

　さて，今日の話題は，「偽りの親睦」ですが，この本の第2部（他者の尊厳を侵害してしまう原因となる10の心理的誘惑）の第20章（偽りの親交や品位を落とすようなゴシップに加わる）において，本書の著者は，「偽りの親交や品位を落とすようなゴシップに加わることによって，他者の尊厳を侵害してしまう原因となる心理的誘惑に負けないようにしましょう。」という趣旨で，以下のように記述しています（本書278-284頁）。なお，〔　〕内は，私の注釈です）。

　１．人の品位を落とすようなゴシップに加わることで，他者とつながろうとする心には気をつけましょう。その場にいない人を公然と批判したり非難したりすること〔他人の名誉を棄損すること〕は，有害かつ尊厳に欠ける行為です。

　２．〔確かに，ゴシップは，事実（真実）を共有するための有効な情報交換手段であり，共同生活において迫りくる危険を回避するためにも，最新の情報を得る上でも有益です。〕

　３．〔しかし，事実を伝えようとするのだけでなく，〕もしもあなたが誰かと親しくなりたいのであれば，その場にいない人を犠牲にする話ではなく，あなたという人間について語り，あなたの内面の深い信条について話しましょう。

　〔例えば，以前の私ならば，以下のような話をしてきました。「私は，迷惑にならない範囲で，女性の役に立つことならなんでもしたいと思っているし，それができる男なのですが，ご覧のとおり，『チビで，禿で，年寄り』という三重苦を抱えており，女性に持てなくて悩んでいます。…」〕

　４．そして，相手にもそうするように勧めることです。もともと，ゴシップは，ある集団の中で義務を果たさず，利益だけを貪る人を罰するための方法でした。しかし，対象となった相手を貶めるような陰口を言うのは，自らの尊厳を危険にさらすことにほかなりません。

　「名誉棄損」とは，ある人の社会的評価を引き下げる行為のことです。名誉棄損が成立するかどうかの要件と成立した場合の罰則は，刑法230条と230条の2に規定されています。

　刑法 第230条（名誉毀損）
　①公然と事実を摘示し，人の名誉を毀損した者は，その事実の有無にかかわらず，3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
　②死者の名誉を毀損した者は，虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ，罰しない。
　第230条の2（公共の利害に関する場合の特例）
　①前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り，かつ，その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には，事実の真否を判断し，真実であることの証明があったときは，これを罰しない。
　②前項の規定の適用については，公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は，公共の利害に関する事実とみなす。
　③前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には，事実の真否を判断し，真実であることの証明があったときは，これを罰しない。

　名誉棄損に関する民事責任について，民法は，刑法の名誉棄損の要件を受け継ぎつつ，その効果について，損害賠償責任だけでなく，名誉を回復するための原状回復責任についても規定しています。

　民法 第723条（名誉毀損における原状回復）
　他人の名誉を毀損した者に対しては，裁判所は，被害者の請求により，損害賠償に代えて，又は損害賠償とともに，名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
　最一判昭41・6・23民集20巻5号1118頁（名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求）
　（事案概要）衆議院議員の総選挙の立候補者に対して，ある新聞社が，その候補者は，「学歴および経歴を詐称し，これにより公職選挙法違反の疑いにより警察から追及され，前科があつた」という趣旨の記事を掲載した。この新聞記事が名誉棄損に当たるかどうかが争われた。
　（判決要旨）名誉毀損については，当該行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合において，摘示された事実が真実であることが証明されたときは，その行為は，違法性を欠いて，不法行為にならないものというべきである。
　（詳細要旨）民事上の不法行為たる名誉棄損については，その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には，摘示された事実が真実であることが証明されたときは，右行為には違法性がなく，不法行為は成立しないものと解するのが相当であり，もし，右事実が真実であることが証明されなくても，その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには，右行為には故意もしくは過失がなく，結局，不法行為は成立しないものと解するのが相当である（このことは，刑法230条の2の規定の趣旨からも十分窺うことができる）。

　たとえば，ロータリークラブの会員が，他の会員の陰口を複数人に告げた場合に，それがその人の社会的地位を低下させるようなものである場合には，名誉棄損の構成要件に該当します。そして，その陰口によって，陰口を告げた人が名誉棄損罪で罰せられることを免れるためには，その陰口が，公益を図る目的（みんなのためになるかどうか）に関することであり，しかも，その陰口が真実であること（真実かどうか）が証明された場合に限って，違法性がないとして，刑事責任からも民事責任からも免責されるということを自覚しておきましょう。
　以上を踏まえて，陰口には，注意しましょう。ただし，四つのテストの第3の要件と第4の要件を満たしている場合には，刑罰からも民事責任からも免れますので，ロータリークラブの一員としては，親睦と奉仕の精神を鼓舞するだけでなく，ロータリークラブの会員の「守り神」でもある「四つのテスト」をくれぐれも大切にするようにしましょう。

　今日取り上げた「偽りの親睦」の問題は，「四つのテスト」のうちの，第3「好意と友情を深めるか」に関連するとともに，ロータリークラブの目的のうちの第1（知り合いを広めることによって奉仕の機会とする）とも関連します。
　好意と友情を深めるために，知り合いを広めることは大切ですが，それぞれの人の尊厳と自らの尊厳を損なわないように，「みんなのためになるかどうか」，そして，「真実かどうか」をいつも心に留めて行動しましょう。

幹事報告

本日の予定

• 会員卓話　奥村元一会員
  『新型ウイルス感染症（COVID-19）の影響による生態系破壊について』

本日のゲスト

• 片山　勇　様（２７２０ジャパン大分・熊本ロータリーＥクラブ）

次週の予定

• 　９月２２日（火）休会

今後の予定

• 　９月２９日（火）体力アップ例会　別府近隣７ＲＣ親睦ソフトボール大会に向けての練習
  　　　　　　　　　（黒岩グラウンド）
• １０月　６日（火）米山奨学生卓話
  　　　　　　　　　ダカル　ビシャル様　ネパール出身　男性 ＡＰＵ ホスト別府北ＲＣ
• １０月１３日（火）外来卓話　大分大学経済学部教授　鵜崎清貴様
• １０月２０日（火）イエナプラン　オランダ研修の現況について
• １０月２７日（火）会員卓話　穴井伸一会員

今週の配布物

• 週報（第１６９７回分）
• ハイライトよねやま２４６

今週の回覧物

• 地区事務所より『２７２０地区ローターアクト地区新聞』
• 地区事務所より『第４９回ロータリー研究会ご案内』
• 地区事務所より『２７２０地区よねやまチャリティーゴルフコンペのご案内』

お知らせ

• 第３５回 日出ロータリークラブ旗争奪少年野球大会
  　日時：　９月２０日（日）糸ヶ浜グラウンド（会員は朝８時に集合し会場設営）
• 第３７回 別府近隣７ＲＣ親睦ソフトボール大会
  　日時：１０月１７日（土）０９：３０～野口原グラウンド
  　　　　　　　　　　　　　１８：００～懇親会（両築別邸）
• 社会奉仕・国際奉仕・公共イメージ　合同セミナー
  　日時：１１月　７日（土）１３：００～１６：００（受付開始１２：３０～）
  　場所：大分県消費生活・男女共同参画プラザ「アイネス」
  　登録：臼杵德二ガバナー補佐、加賀山茂会長、秋吉尚康幹事、吉弘秀二会員、
  　　　　佐藤英隆会員、上野公則会員、石和桂子会員、上野浩伸会員
• 職業奉仕ハイブリッドセミナー
  　日時：１１月２１日（土）１４：００～１６：００（受付開始１３：３０～）
  　場所：熊本城ホール、大分コンパルホール、もしくはＺＯＯＭオンライン会場
  　登録：上野公則会員、上野浩伸会員

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例会変更

別府北RC	9月16日（水）の例会は『例会場の都合』の為、『18:00～割烹旅館 もみや』へ変更します
湯布院RC	9月22日（火）の例会は『休会』します
	9月29日（火）の例会は『早朝例会』の為、『06:30～総合グラウンド』へ変更します
別府東RC	9月24日（木）の例会は『観月会』の為、『同日 時間・場所未定』へ変更します
別府RC	9月25日（金）の例会は『休会』します
大分臨海RC	9月28日（月）の例会は『夜例会』とします
大分1985RC	9月28日（月）の例会は『通常例会』とします

ニコボックス

加賀山茂会長（Ｔ）：

ウイルスに関する興味深い本の紹介 私は，本日の会長の時間で，以下の2冊の本を引用させていただきました。 ・ドナ・ヒックス（ノ・ジェス (監修), ワークス叔悦 (訳)） 　『Dignityディグニティ 』幻冬舎（2020/3/2） ・田淵俊彦=NNNドキュメント取材班『発達障害と少年犯罪』新潮新書（2018/5/16） これらは，ロータリークラブの奉仕活動にとって，とても有用な本だと思いますので，改めて紹介させていただきます。 そのほかに，今日の奥村元一会員の卓話に関連するウイルス関係の以下の書籍を併せて紹介させていただきます。 ・ダニエル・デフォー（平井正穂訳）『ペスト』中央文庫（1973） ・福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書（2007/5/20） ・中屋敷 均『ウイルスは生きている』講談社現代新書 (2016/3/20) ・武村政春『生物はウイルスが進化させた－巨大ウイルスが語る新たな生命像－』 　ブルーバックス（2017/5/1） ・武村政春『ヒトがいまあるのはウイルスのおかげ 　－役に立つウイルス・かわいいウイルス・創造主のウイルス』さくら舎（2019/1/11） 次回の会長の時間では，以上の書籍を参照しながら，ウイルスにたいしてどのような方法で対処すべきかについて，検討してみたいと考えております。 以上です。いつも通り，トリプルでお願いします。

片山 勇様（Ｗ）：	私は年に数回は各クラブを訪問しますが、特に日出ＲＣの例会は素晴らしいと思います。ゲストの私の名前を載せて頂きありがとうございました。

交通安全街頭啓発活動

	『令和２年　秋の全国交通安全運動』に参加し、交通安全街頭啓発活動を行いました。 日時：９月２３日（水）午前７時３０分～８時 参加：加賀山茂会長、臼杵德二会員、宮﨑仁史会員