事務局 〒879-1506 | |||
大分県速見郡日出町3904-6 | |||
医療法人 久寿会 鈴木病院 | |||
TEL : 0977-73-2131 FAX : 0977-73-2132 | |||
mail : jimu@suzuki-hp.or.jp | |||
会長 | 本 多 和 夫 | ||
副会長 | 臼 杵 徳 二 | ||
幹事 | 上 野 浩 伸 | ||
公共イメージ委員長 | 秋 吉 尚 康 |
例会日 | 火曜日 | 19:00 | |
会 場 | 日出町 | ホテル&リゾーツ別府湾 |
■ 出席報告 | 阿南亀義会員 | ||
会員総数 | 19名 | ゲスト | 2名 |
会員出席数 | 11名 | ビジター | 0名 |
会員出席率 | 64.7%(11/17) | 出席者数 | 13名 |
前々回出席率 | (4月17日) 58.8% (10/17) |
修正出席率 | (4月17日) 58.8% (10/17) |
100%連続回数 | 0回 | 100%通算回数 | 373回 |
出席免除会員 | 山田滋彦会員、脇屋貴夫会員 |
● メイクアップ | |
事前 | |
事後 | |
● 欠 席 | 穴井伸一会員、原田順二会員 石和桂子会員、森 博美会員 田村 悟会員、脇屋貴夫会員 山田滋彦会員、吉弘秀二会員 |
点鍾 | 19:00 |
ロータリーソング | 君が代、奉仕の理想 |
ゲスト | 加賀山茂様(名古屋大学・明治学院大学名誉教授) 河野健二様(㈱Lead 代表取締役) |
ビジター |
会長 本多 和夫
皆さん、こんばんは。
前回の例会は、ロータリー特別月間「母子の健康月間」ということで、卓話を行いました。
今月の5月は「青少年奉仕月間」となります。本来は青少年奉仕に関することを今月の例会に組み込むべきところですが、例会変更、休会等でスケジュールに組み込むことができなかったため、この「会長の時間」を利用して青少年奉仕について説明したいと思います。
青少年奉仕は、ロータリークラブ活動の哲学的及び実際的な基準となる五大奉仕部門のうちの一つです。具体的には、ローターアクト、インターアクト、ロータリー青少年指導者養成プログラム、ロータリー青少年交換などを通じて、若い世代がリーダーシップ能力を伸ばせるよう支援することであります。
ローターアクトは、18~30歳の人達が集まり、リーダーシップや職業スキルを磨き、ロータリー会員など地元のリーダーと交わり、ボランティア活動をしています。また、インターアクトクラブでは、12~18歳の中学・高校生が、地元でのボランティア活動や海外のインターアクト会員との交流を通じて視野を広げ、国際感覚を養っています。「ロータリー青少年指導者養成プログラム」は通称「RYLA」(Rotary Youth Leadership Awards)と呼ばれ、クラブや地区(または複数地区合同)によって実施される、若者のためのリーダーシップ養成プログラムです。イベントは、1日のセミナーから最大1週間の合宿など、目的、リソース、参加者の種類によってさまざまな形で実施され、多くのイベントは高校生、大学生、若い社会人を対象としています。イベントの目的も、家庭に問題を抱えた青少年を支援する、インターアクトやローターアクトのリーダーシップ能力を高める、ロータリー学友と再びつながる、職業人のリーダーとなる人材を育てるなど、多岐にわたります。ロータリー青少年交換は、人生を変えるような貴重な経験を若者に味わってもらい、新しい文化や習慣に触れることで、グローバルな理解を芽生えさせ、平和の土台を築くことが目的です。
いずれにしても、若いうちからロータリーに関心を持ってもらい、ひいては、将来、ロータリークラブ会員として入会していただくのがベストだと思います。そのためにも、我々の方から積極的に若い世代との交流を持つことが大事です。特にロータリー青少年交換は、次年度からいよいよ開始されます。この点は、国際奉仕ともつながっていくものだと考えます。青少年奉仕に対して、会員の皆さんの更なる支援をお願いして、会長の時間を終わります。
(参照:マイロータリーweb site)
別府RC | 5月11日(金)の例会は『新会員歓迎野外家族夜例会』の為、『18:30~両築別邸・中庭』へ変更します |
大分1985RC | 5月14日(月)の例会は『玖珠・日出RCとの合同例会』の為、『5月13日(日)』へ変更します |
5月28日(月)の例会は『クラブ内研修会』の為、『12:30~コンパルホール』へ変更します | |
別府中央RC | 5月15日(火)の例会は『例会場の都合』の為、『12:30~場所未定』変更します |
5月29日(火)の例会は『例会場の都合』の為、『12:30~トキハ別府店7F』変更します | |
大分中央RC | 5月15日(火)の例会は『職場例会』の為、『場所未定』変更します |
くにさきRC | 5月16日(水)の例会は『休会』します |
5月23日(水)の例会は『夜間例会』の為、『19:00~』に変更します | |
大分臨海RC | 5月21日(月)の例会は『記念例会』の為、『18:30~ホテル日航大分オアシスタワー』へ変更します |
5月28日(月)の例会は『親睦バス旅行』の為、『5月27日(日)』へ変更します | |
別府東RC | 5月24日(木)の例会は『創立記念日夜例会』の為、『18:30~ホテルサンバリーアネックス』へ変更します |
5月31日(木)の例会は『落語を楽しむ例会』の為、『12:30~ホテルサンバリーアネックス』へ変更します | |
大分東RC | 5月24日(木)の例会は『創立55周年記念例会』の為、『18:30~「ザ・ブリッジ」』へ変更します |
5月31日(木)の例会は『休会』します | |
大分南RC | 5月25日(金)の例会は『夜の親睦例会』の為、『18:30~場所未定』へ変更します |
竹田RC | 5月29日(火)の例会は『夜間例会』の為、『5月26日(土)18:00~ホテル岩城屋』変更します |
宇佐RC | 5月31日(木)の例会は『休会』します |
資格
・大分県知事登録 大分県26ね第52-10号 ・防除作業監督者 防第12729号 事業内容 ・ネズミ昆虫等制御コンサルティング ・飛翔昆虫 ・殻害虫制御コンサルティング ・鳩、カラス等有害鳥獣コントロール ・コウモリ、シロアリ、ネズミ等住宅害虫生息調査 ・鳥インフルエンザ ・O157等殺菌消毒、衛生指導 弊社の理念は「お客様の暮らしを快適な環境へ導く」ことです。その為にお客様とよりよいコミュニケーションを築き熱意を持って害虫、害獣と向き合い問題を解決する努力します。お客様の期待にお答えできるサービスを提供できるように従業員一同取り組んで参ります。 (ホームページ www.lead-beppu.com より抜粋いたしました) |
奥村元一会員(S): | 5月5日、妻、節子の誕生日に、当クラブよりきれいな生花を頂きありがとうございました。妻は大変喜んでおりました。 |
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臼杵徳二副会長(W): | 加賀山茂氏、河野健二氏、やっと念願がかないました。ロータリーに入会して頂ける事、有難う御座います。また本日は卓話を宜しくお願い致します。 5月13日 玖珠・大分1985・日出の合同例会に母の日の為、出席できませんのであしからず。 |
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佐藤 雪会員(S): | 先日は私の誕生日ということで皆様からお花をいただきありがとうございました。 |
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上野浩伸幹事(T): | 本日卓話をして頂く加賀山 茂様、ゲストの河野健二様の入会がまもなくです。素晴らしいお二人方を紹介して頂いた臼杵副会長、大変ありがとうございました。 |
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本多和夫会長(T): | 今日は、入会予定の2名の方にゲストとして来ていただき大変うれしく思います。これからもよろしくお願いいたします。 また、13日に予定している合同例会は残念ながら、欠席いたします。申し訳ありません。 |
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皆さま、今晩は。ただいまご紹介にあずかりました、名古屋大学・明治学院大学の名誉教授の加賀山 茂です。
本日は、日出ロータリークラブという由緒あるロータリークラブで卓話をさせていただく機会を与えてくださった会員の皆様に心からお礼申し上げます。
1.日出ロ一タリークラブとのご縁
私が最初にこのロータリークラブの会合にゲストとしてお招きいただいたのは、2018年2月20日のことでした(翌週の日出ロータリークラブの週報に、私がゲストとして会合に出席したことが報じられており、情報管理のスピードと正確さに驚き、感心いたしました)。
私と日出ロータリークラブとのご縁は、私が月2回のぺースでお花を買いに行く「花精」のご主人から、会合への出席のお誘いがあったからです。
そして、ゲストとして会合に参加させていただいたところ、すぐに、鈴木病院院長から、2冊の本をいただきました。付度(guess)しますのに、「あなたは,学者なのだから、ロータリークラブについて、また、日出町について、このくらいの知識は持っておきなさい」という暖かいお心遣いが込められていたのだと思います。
院長からいただいた2冊の本というのは、一つは、日出ロータリークラブ編『大夢翁土屋元作(つちや もとさく)』(1996/10/1)であり、もう一つは、岩藤みのる『暘谷城の残影―豊後日出藩・家老[加賀山半左衛門]の殉教』(1998/9/20)です。
第1冊目の本(『大夢翁 土屋元作』)によって、私は、以下の3点を知ることになりました。
第1点は、ロータリークラブの歴史です。ロータリークラブとは、1905年Chicagoに創設された社会奉仕と世界平和を目的とする、実業家および知的職業人の団体のことであるとされています。ロータリー(Rotary:回転する)という名前は、会合を各会員の事務所を輪番で回して行なったことに由来しているそうです。ロータリークラブは、次第に発展して、現在では、世界各地の支部がRotary International (国際ロータリ一)を構成しているとのことでした。
第2点は、土屋元作は、「植物は種から芽を出し、花を開き、実をつけ、再び又種に返る」という二宮尊徳の言葉をとらえて、二宮尊徳こそが、日本の最初のロータリアンではないかと考えていたということです。
私は、日出町での社会貢献として、無料の「寺子屋ひじ塾」を開設する準備を進めていますが、ロータリアンとされる二宮尊徳の精神は、「寺子屋ひじ塾」の開設の精神とも重なるところがあると思いました。なぜなら、二宮尊徳の言葉は、それを補って考えると、「種→(発芽環境)→発芽→(成長環境)→開花→(生殖環境)→成熟(育成環境)→種」という生態系の循環・回転(Rotate:自転する)を明らかにするとともに、人に譬えるならば、その「教育環境」の重要性を暗示していると考えたからです。
第3点は、郷土の誇りとなっている日出出身のロータリアン土屋元作は、同じく日出出身の大作曲家である瀧廉太郎といとこ同士だったことを知ることができました。また、土屋元作は、私が昨年まで勤めていた明治学院大学の前身である「英知一致学校(バラの学校)」に在学したことがあることも知って、縁の深さに驚きました。
さらに、第2冊目の本、岩藤みのる『陽谷城の残影一豊後日出藩・家老[加賀山半左衛門]の殉教」(1998/9/20)によって、私と同姓の日出藩の家老であった加賀山半左衛門が、郷土の危機を救った人物であることを知ることができました。
以上の2冊の本を読んでみて、院長がこの2冊の本を私に贈って下さった本当の意図というのは、今から推測しますと、ロータリークラブへの入会候補としての私に対して、「ロ一タリークラブのミッションをよく知って、加賀山半左衛門というあなたと同姓の人物に劣らぬ貢献を日出町にしてほしい」ということだったと思います。
私は、昨年2017年3月に明治学院大学を定年退職したのですが、在職中の「12年間で7名の博士号取得者を指導教授として輩出させたこと、「法と経営学研究科」という日本で初めての研究科を創設したことが評価されて名誉教授になりました。また、それ以前に、アジア法整備支援の一環として、アジア各国で行なった英語での契約法・不法行為法の講義の実績が評価されて名古屋大学から名誉教授をいただいており、ダブル名誉教授という栄誉に浴しております。そして、昨年は、講義や雑務に煩わされることなく、じっくりと研究ができるという名誉教授の身分を満喫することができました。
ところが、今年の4月からは、「定年でのんびりさせるのはもったいない、いや,許せない」ということなのか、吉備国際大学の大学院(通信制)の知的財産学研究科の特任教授として、民法と著作権法を教えることになりました。また、大分大学では、非常勤講師として春学期に週1回(月曜・3限)に「消費者と法」という講義を担当することになりました。
このため、今年開設の予定だった「寺子屋ひじ塾」の開設が数年先にずれ込むことになりましたが、いずれ、近い将来に教材,授業料ともに無料の「寺子屋ひじ塾」を開設して、貧困とかいじめとか、様々な理由で高校・大学での教育の機会を失った日出町周辺の青少年を対象にして、その人がどこで躓いたのかを発見し、その躓いた箇所に遡って再教育を行い、希望する資格を獲得してもらって、社会に貢献できる人材を育成していくつもりです。その活動を通じて、日出町の平和と発展に貢献したいと思います。
そうはいっても、私の個人資金は豊富ではないので、寄付とかインターンシップの受入れ等、皆様にお願いしたいと思いますので、その節は、よろしくお願いします。
2.私の専門分野(法律:民法・消費者法,法情報学)の紹介
私の専門は法律学で、特に、市民生活の基本法といわれている「民法」、生活者の権利を守る「消費者法」、AI(人工知能)を利用した法的推論を扱う「法情報学」という、3つの法学分野、および、「法と経営学」という専門横断的(学際的)な研究を行っています。
法律学というと、たいていの方は、「難しそうで、わけのわからないこと」をやっているとか、「黒を白と言い含める胡散臭いこと」をやっていると考えられているようです。
確かに、これまでは、法律学は、法曹(裁判官、検察官、弁護士など)を育成するための教育を別にすると、公務員とか企業への就職を希望する学生に対して、明確な目標を提示せずに、「つぶしの効く」人材を育成するというように、非常にあいまいな目標の下に教育が行われてきたため、上記のような胡散臭さを解消できずにいたように思います。
しかし、法律学は、大学が発祥して以来、神学、医学とともに、大学の一大専門分野として研究・教育が行われてきたのであり、実は、医学と同様の役割を担っているのです。なぜなら、医学が人間の病気の予防と治療を研究する学問であるのと同様に、法律学は、社会の病理現象である紛争の予防と平和的な解決を研究する学問だからです。
3.医学および法学に共通の教育改革の必要性
それにもかかわらず、法律学が市民の生活から遠ざかっているのはなぜでしょうか?
実は、市民生活に不可欠の医学においても、同じような問題を抱えているのです。医学教育は、「病名→症状→治療法→予防法」という順序で教育が行われてきました。しかし、この教育には、欠点があります。NHKの病名推理番組「ドクターG」をご覧になるとわかるように、上記のような教育を受け、国家試験に合格した研修医であっても、運ばれてきた急患の症状とその診察の模様をビデオで見せられた後、その症状から病名を推現させてみると、見事なほどに間違う(誤診する)ことがよくわかります。
これは、笑い事ではなく、人命にかかわる由々しき事態なのですが、これまでの医学教育で、「病名→症状」という順序では、すべての病名を暗記しているはずの研修医が、反対に、「症状→病名」という推論では、ことごとく失敗するということが明らかになっているのです。これは、残念ながら医学教育の失敗を意味します。そこで、近年では、医学教育の根本的な改革の必要性が叫ばれるに至っています。
法律学においても、これと同じ現象が起こっています。法律学においては、学生たちは、「条文→条文の意味・立法の趣旨→その条文が適用された判決例」という順序で学習します。しかし、現実の事例を与えられて、それに適用される条文が何かを問われると、全く答えられません。つまり、現在の法学教育を受けた学生たちは、「条文→判例・事例」という方向の推論はできるようになるけれども、逆の「事例→条文」という順序での推論ができないまま、卒業していくのです。これでは、実際の事例について、法的な解決を提言することはできません。これも笑い事ではない由々しき事態なのですが、医学と比較するとその危険性が深刻ではないため、法学教育の改革は全くなされることなく放置されてきたのです。
このことを簡単に言えば、英語を読んで英文和訳ができる人で、反対に、日本語を英語に翻訳するという和文英訳は簡単ではないというのと同じです。しかし、逆向きの推論ができなければ学習した理論は実践に耐えられないのです。(理論と実務の乖離)。
4.教育改革を阻む問題の深刻さ
医学部を卒業して国家試験にも合格し、研修中のインターンは、なぜ、患者の病状を見て、正確な病名を推論できないのでしょうか?同様にして、法学部の学生は、なぜ、紛争事例を前にして、その事例に適用すべき法律名とその中の条文名を推論できないのでしょうか?
まず、医学の場合、いくら「病名から病状」を暗記していても、同じ病状を発症する病名は数多くあり、「病状から病名」を推論することは簡単ではないからです。
このことを、2017年5月10日(木)にNHKのドクターGで放映された「意識がない」という「自宅で意識を失って倒れていた若い女性の患者」という症例で説明することにしましょう。日出ロータリークラブには、優秀なお医者様が複数名いらっしゃいますので、たぶん、法学の話よりも、よくご理解いただけるのではないかと思います。
この番組の患者のように、「意識障害、疣贅(ゆうぜい)、むくみ」という病状を発症する病名には「感染性心内膜炎」と「全身性エリテマトーデス」という二つの病名があり、それぞれの治療法は、一方は、「免疫を強化するため、抗菌剤、抗生剤を使用しなければならない」のに対して、他方は、「免疫を押さえるために、ステロイドかつステロイドパルスを大量授与しなければならない」という逆の治療法を行わなければならないのです。この場合に、もしも、病名を間違えると、患者を確実に死に至らしめるという恐ろしい症例です。
法律学の場合も同様です。例えば、医師が頼まれて医療行為を行っている場合には、患者が、他の医師にかかりたいと考え、「治療をやめてください」といったときは、その医師は、たとえ、それが本人のためにならない場合であっても、医療行為をやめなければなりません(民法651条)。しかし、土俵上で来賓が倒れるという緊急事態が生じた場合には、医療関係者は、頼まれなくても緊急措置を講じることができます(民法698条)、そして、たとえ、主催者から「女の人は土俵から降りてください」と言われても、交代の男が来るまでは、緊急の治療行為をやめずに、その治療行為を継続しなければなりません(民法700条)。
このように、法学教育によって、トップダウン式の「条文→判例・事例」を完壁に理解し、司法試験に合格したとしても、現実の紛争事例に適用すべき条文の候補は、一つとは限らず、複数の候補が存在するため、ボトムアップ式に、「現実の事例→適用されるべき条文」という逆向きの推論を行うことは、簡単ではないのです。
これまでの大学教育は、この問題から逃げてきました。つまり、医学部では、「病名→病状・治療法」というトップダウン式の推論だけを教育し、逆向きの「病状→症例」というボトムアップ式の推論は、国家試験に合格した者だけに対して、臨床教育として実施するということにしてきました。また、法学部では、「条文→その意味・立法趣旨→判例・事例」というトップダウン式の推論だけを教育して、逆向きの「紛争事例→条文・判例」というボトムアップ式の推論は、法科大学院に入学したり、司法試験に合格したりした者だけに、法科大学院とか司法研修所とかにおいて、臨床法学教育として実施することにしてきました。
しかし、このような教育方法は、以下のように、致命的な欠陥を有しています。医学部では、臨床教育を受ける者は多いとはいえ、専門分野が決定されてからしか行われないため、臨床教育を受けても、いわゆる「専門バカ」になってしまい、他の分野の症例については、あい変わらず、ボトムアップ式の推論がうまくできないのです。
また、法学教育では、そもそも、臨床教育を受ける機会を有する者は、ごく少数に限定されている上に、逆向きの推論の入門としての「ゼミ」も、また、法科大学院とか司法研修所における臨床法学教育も、専門分野ごとに分断されており、分野横断的な生の紛手車例に対して、ボトムアップ式の推論ができるようになりません。したがって、法学部を卒業しただけでは、「条文→意味・判例・事例」というトップダウン式の推論だけしかできないのであって、いわゆる「頭でっかち」に過ぎず、実際の紛争の平和的解決という大切な場面では、役に立たない法学部出身者が世の中に溢れているのです。その結果、このような法学部出身者に対しては、世間からは、理屈だけは言えるが紛争解決には邪魔なだけの「小生意気な野郎」とか、「小役人」とか、「官僚的でいけ好かない奴」とか、悪口に事欠かない現象が生じることになるわけです。
5.法学教育革命(Revolution:公転,自転:Rotate)の目標と方法
法学教育は、従来のように、条文から始めてその意味と立法理由を知り、その条文が適用された、判例・事例を学ぶという理論重視のトップダウン式の教育で終わりにするのではなく、今後は、生の紛争事例から始めて、その紛争事例を平和的に解決できる方法を提言できる能力、すなわち、ボトムアップ式の推論ができる人材を育成するという方向に向かわなければなりません。
しかし、何事もそうですが、改革を進めるためには、「明確な目標」とそれを「実現する方法論」が伴わなければなりません。今まで申し上げてきたことからお分かりの事と思いますが、今後の法学教育の目標は、生の紛争事例を目の前にした学生が、その事例に適用されるべき条文・判例を一方に有利なものを探索できるだけでなく、他方に有利となる反対の結論を導き出す条文・判例をも的確に探索できる能力を有し、しかも、両者の結論を事例に即して詳しく検討し、「当事者双方も、専門家も、そして、世論をも納得させる」という解決案を提言できる能力を有する学生を育成することにあります。
従来は、そのような目標は、それを達成する方法論が見つからなかったため、経験的な試行錯誤によってのみ修得できるものであり、そこまでの目標は高度過ぎて実現不可能だと考えられてきました。しかし、その方法は、実は、これまでの考え方を捨てさえすれば、困難なことではないのです。その方法とは、教えることを断念し、学生と教員とが共に学び合うということに専念すればよいのです。
そのよい例は、オリンピックの選手の育成でしょう。同様にして、教員は、教えることをやめ、コーチに徹し、生徒や学生と共に学ぶことが大切なのです。
教員は、生徒や学生の一人ひとりの能力を見極め、その能力を最大限に引き出すことを目標にすべきです。そして、生徒や学生たちは、教員のアドバイスを受けつつも、どんな紛争事例に対しても、第1に、紛争当事者の意見に耳を傾け、紛争当事者が何を望んでいるのかを聞き出し(法律効果の確定)、第2に、その効果を実現するための、相対立する効果を導く条文を探索し、どちらの条文を適用するのが、双方の当事者にとって有益か、そのために何を証明する必要があるのか(法律要件の充足)を見極めることができるように訓練を積めばよいのです。
私が、「寺子屋ひじ塾」の開設を思いついたのは、明治以来の詰め込み教育を続けている学校教育が、現代の少子・高齢化社会においては、すでに役割を終えており、むしろ、江戸時代の寺子屋教育に立ち返り(Rotate)、小人数かつ学年を区別しないコーチングの方法に活路を見出すことができることに気づいたからです。寺子屋では、生徒は自分の興味のあることを自学自習したり、学年の違う生徒同士で教え合ったり、分からないことを教師に質問したりして、自由に学習を行ってきました。教師も決まったことを教えるのではなく、生徒の質問にヒントを出したり、一緒に考えたりして、学習能力をアシストするだけだったのです。寺子屋の教育方法(アクティブラーニング・反転授業)を現代に活かすならば、生徒たちは、どんな困難な問題でも、自分で資料を調べ、友達と議論してより良い方向を模索し、先生のアシストを受けて偏見を脱し、社会に貢献できる人材として巣立っていくと思われます(教育における革命(Revolution))。
このように考えると、教育における革命(Revolution)とは、明治以来の富国強兵のための学校教育を打倒して、江戸時代の少人数の寺子屋教育へと回転すること(Revolution)を意味するといえましょう。ロータリークラブの語源となったRotateは惑星の自転であり法教育において行わなければならない革命(Revolution)は、惑星の公転であることを考えるならば、ロータリークラブの今後の活動においては、自転だけでなく、国際的な視野から公転を行うことが緊急の課題となっているのではないでしょうか。
二宮尊徳というロータリアンが地域の発展とともに、子どもの教育に力を入れたように、ロータリークラブの皆様方も、学校教育を支援するだけでなく、学校教育の革命、すなわち、今はやりのアクティブラーニングとか、反転教育をとっくの昔に実現していた「寺子屋教育」への転回、私が目指すのと同様の教育革命を推進すべき時代に来ているように思います。
6.結論 (逆向き推論を実現するための教育方法論の実践)
中世に大学が発祥したときから、大学の中心的存在として続いてきた医学と法学ですが、どちらも人間にとって生命・身体・財産を良い状態に保つために不可欠の学問であるにもかかわらず、どちらも、理論倒れになったり、専門分野だけを異常に発展させて、専門間の調整総合化が不十分となっていたりして、すべての人が抱える問題にきちんと対応することが困難な状況に陥っています。
それを解決する方法が、トップダウン式の教育(医学では病名→症状→治療法・予防法、法学では、条文→その意味と立法趣旨→判例と生の事例)、および、これと並行して行われるべきボトムアップ式の少人数教育(医学では、生の症例→病名、法学では、生の事例→判例と条文)なのです。そして、この教育方法に関する幼児教育から大学教育に至るまでのカリキュラムを確立し、普及することが緊急の課題となっています。
私は、以上の課題を幼児教育用の絵本、「寺子屋ひじ塾」、そして、民法の革命的な教科書の執筆を通じて実現したいと思っております。今後とも、皆様方のご支援をお願いします。
7.今後の展望
わが国は、世界に先駆けて少子高齢化の波に飲まれた少子・高齢化社会の先進国であると同時に、AI(人工知能)の進展に後れを取ってしまったため、AI後進国になりつつあります(野口悠紀雄『仮想通貨革命』ダイヤモンド社(2014/6/5)参照)。
産業革命は、ブルーカラーを次々に失業へと追い込みましたが、現代は、AI革命によって、様々な職種のホワイトカラーが失業へと追い込まれる危険が間近に追っています。
明治以降の画一的なカリキュラムを実施している学校教育を今のまま放置していると、学校教育を受けた若い世代のほとんどは、AIに劣るものとして、失業の憂き目に遭うことが目に見えています。
現在のAIは、確率統計学の所産であり、しょせんは意味を理解できない代物に過ぎません。したがって、AIに負けない人材とは、人類の文化的遺産である書物、基本的な教科書の意味をきちんと理解できる人間であり,そのような人間を育てる必要があります(新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新聞社(2018/2/15))。
しかし、文科省が提唱している教育改革も、学年制を温存した多人数教育としての学校教育では、成功の見込みがないと思われます。そこで、日出ロータリークラブの今後の方針の一つとして、学校教育で落ちこぼれた生徒・学生たちを対象にして、学年の区別なく個人の能力を見極め、実践に対応できる教育をアシストすることが重要になると思います。
その方法は、実は、簡単です。ロータリークラブの会員の方々が、自らの職場を、「子供たちに誇れる職場」へと改革し(P.F.ドラッカー(上田惇生訳)『非営利組織の経営』ダイヤモンド社(2007/01/26)、職場に子供たちを招いて、実習をさせるだけでよいのです。将来の職場を経験した子供たらは、勉強することの意味を理解し、実践に耐えうる勉強するようになるからです(船津徹『世界標準の子育て』ダイヤモンド社(2017/7/6))。
今後は、ロータリークラブの会員の方々が、学校教育現場をよく観察し、学校教育を無批判に受け入れるのではなく、AIに負けないための教育革新の方向性を提言し、実習生を招き、職場での仕事を体験させ、自らの職業倫理に従って実習生に自信を持たせ、学校教育にこだわらない教育実践を行うための施策を講じて、日出町の子どもたちを、日本で有数の、世界に通用する人材へと育成するよう、尽力していただきたいと思います。
名古屋大学・明治学院大学名誉教授 加賀山茂様へ本多和夫会長よりお花の贈呈 |