職業奉仕とは何か、なぜロータリーの真髄と言われるのか
（１）　２０１４年９月、２７２０地区職業奉仕部門長を引き受けてほしいと言われてから、私の一貫したテーマは、職業奉仕とは何か、職業奉仕は、なぜ、ロータリーの真髄、核心、金看板等と呼ばれるのかでした。
　職業奉仕とは何か、については、ロータリーの定款・細則、手続要覧、職業奉仕に関わるドキュメント等々を中心に調査をし、自分なりに様々な定義付けを試みました。「自らの顧客を満足させ続けること」と定義し、これで良いのではないかと思っていた頃もありました。

ポール･ハリスは　
職業奉仕＝「所属業界の倫理的向上に関する事項」、と説明している。

　 ポール･ハリス語録
ナショナル・ロータリアン、1912年1月号

　社会に役立つ人間になる方法はいろいろありますが、最も身近で、しばしば最も効果的な方法は、間違いなく自分の職業の中にあります。

（２）　しかし、今では『職業奉仕＝職業倫理の向上運動』に落ち着いています。
このように定義付けをした第１の理由は、ポールハリスが自らの著書、「Ｔｈｉｓ　Ｒｏｔａｒｉａｎ　Ａｇｅ」において「奉仕」を「所属業界の倫理的向上に関する事項」定義しているのに由来します。
ここで、ハリスの定義において注目しなければならないのは、自らの職業倫理の向上だけでなく、自らが所属する業界の職業倫理の向上も成し遂げようとする点です。ハリスが、何故このように説明するのか、ロータリークラブの誕生の辺りから説明を試みたいと思います。

　 ポール･ハリス語録
「職業倫理の発展」1927 年シカゴ法曹協会記録

社会の二一ズに貢献する最も身近で適切な手段として、自分の職業を高揚させることによって広がる見通しほど魅力的なものはありません。

　 ポール･ハリス語録 This Rotarian Age

　事業の実践方法には著しい変化がありました。ロータリーの強い影響が感じられるのはこの分野です。
　昔は、実業家は一つのこと、金儲けしか考えませんでした。今日、実業家は、顧客、従業員、同業者、仕入先、一般の人々に対して公正でなければなりません。時代は、事業にどれほどの力量があるかと挑戦しているのです。事業はその挑戦を堂々と受けたのです。

（３）　ハリスがロータリークラブを作ったのは、親睦と互恵のためでした。即ち、大都会シカゴで寂しかったハリスは、友達が欲しかった、そして、その友達が様々な業界にいれば、仕事でお互いに助け合えると考えたからでした。クラブを作って以降、ロータリアンは助け合いました。
　
（４）　ところで、お互いに助け合うためには大変大切なことがありました。それは、不公正なことは出来ない、ということでした。クラブの仲間のみならず、時にはクラブの仲間の顧客を紹介されたりするため、クラブの仲間として居続けられるためには、公正な取引を守らなければならなりませんでした。
　
（５）　公正な取引をし、お互いに助け合った結果、ロータリアンは繁栄しました。そして、ロータリアンは不正な取引は行わないことから、外部の人もロータリアンとは安心して取引が出来ると評価され、大変喜ばれました。
　即ち、公正な取引は、ロータリアンを繁栄させ物資的な満足をもたらしただけではなく、ロータリー外の人にも満足して貰ったのです。そして、ロータリアンはこれによって、精神的にも満足を得たのでした。
　ロータリアンは、公正な取引即ち職業倫理を守ることは、 ロータリアン自身の繁栄ともに社会の満足をもたらすことを発見しました。そこで、ロータリアンは親睦と互恵だけではなく、職業奉仕（＝職業倫理の向上）をロータリー活動の目的として掲げることにしたのです。
　
（６）　ところで、シェルドンが提唱した “Ｈｅ　ｐｒｏｆｉｔｓ　ｍｏｓｔ　ｗｈｏｓｅｒｖｅｓ　ｂｅｓｔ．”という標語があります。これはロータリーの第２のモットーと呼ばれています。
　その意味するところは、ロータリーで、「最もよく奉仕する者、最も多く報われる。」です。
　しかし、これを作ったシェルドンの元々の意味は、 「最も良くサービスをする者が最も儲かる。」でした。千種会の小堀憲助さんなどは、「儲けたかったらサービスに徹せよ」などと訳しています。また、ハーバート・テーラーの４つのテストも、これによって倒産寸前の会社を立て直したのであり、どちらも職業人として繁栄するための標語なのです。即ち、これらは職業人としてのロータリアンに対する標語です。

シェルドンの経営学のモットーが
“One profits most who serves (and conserves 節約) best.”
ロータリー活動のために生み出されたものではない。生まれたのもロータリークラブの発生以前である。
もともとの意味は （商取引において）最も利益を出す秘訣は、顧客に最も良いサービスをする（そして自らは節約する）ことである。
「最もよく奉仕する者、最も多く報われる。」“One profits most who serves best.”
「社会に対してサービスをすればするほど、精神的な満足を得ることが出来る。」 と広くとらえ直し、ロータリーのモットーとしている。
　
社会に貢献する方法であることと、職業人として繁栄するコツを説いている。
●出光佐三（出光石油創業者）
百田尚樹「海賊と呼ばれた男」、この本は、出光石油の創業者である出光佐三氏がモデルですが、次のような一説が出てきます。
大正４年ころ、戦争によって日本の石油の輸入量が激減した中、出光佐三氏の会社はこれを見越して軽油の備蓄を増やしていた。石油の高騰する中、儲ける好機とみた従業員から、売値を上げましょうと進言された佐三が、「軽油の備蓄を増やしたのは投機のためではない。消費者に安定供給するためではないか。今後二度と卑しいことを言うな！」と一括した。
　
●田中作次（田中紙店のモットー）
「いつでも、どこでも、何枚でも」（２０１５年　大分市内８クラブ合同例会での講演）

（７）　しかし、前述の通り、職業人の職業倫理の向上は、 職業人の繁栄のみならず、その顧客の満足、従業員の満足、取引先の満足、ひいては社会の満足をももたらすのです。
　そのため、これらの二つの標語は、職業だけではなく、社会生活全般に対する標語として、若干意味合いを変化させて、ロータリーに取り入れられております。
　例えば、ポールハリスは ｐｒｏｆｉｔｓ を「儲かる－物質的満足」から「精神的満足」に読み替えております。
　
（８）　また、ロータリーでは、職業分類という作業を致します。今は違ってきましたが、以前は一業種から一人の入会しか認めませんでした。
　これは、一業種から複数人の入会を認めると、仕事を会員の誰に頼むかといった点から親睦を阻害しかねないこと、会員卓話において、本音やノウハウを喋りにくいといった消極的な理由の他に、クラブに全ての業界からの入会を目指し、職業倫理を向上させ、全ての業界の繁栄と、全ての顧客の満足を目指すといった積極的な目的があります。
　最近、フォルクスワーゲン、三菱自動車等が、巨大な不祥事を起こしておりますが、ロータリアンはこのような事件が起きるのは、ロータリアンの職業奉仕が足りないからだ、と考えなければならないのです。

ポール･ハリス語録　My Road to Rotary

　ロータリーの会員になるということは、同時に、ロータリアンとして掲げる理想と規範を、自分の同業組合の中にもちこむという責任を負うことです。の点を見落としてはなりません。ロータリアンは、ロータリーの理想と規範を、同業者すべてに、理解させ、受け入れさせるよう努力しなければなりません。

（９）　以上のように、ロータリーにおける職業奉仕は大変壮大な思想であると思います。
　だからこそ、職業奉仕はロータリーの金看板であり、真髄と呼ばれている、と考えています。

会員からのご質問

上野浩伸会員

　(質問)「弁護士業務として、大森克磨先生の取扱の多い案件や経験的に得意とする分野はございますか？」
　(回答)「基本的にどのような案件にでも対応しますが、以前に属していた弁護士事務所では銀行関係や金融関係の取扱が多かったため、経験的にはその様なお仕事が最も多いです。」

例会風景

(左)大森克磨様（地区職業奉仕部門長　大分キャピタルRC）　(右)佐藤英隆会長